SOMMET(ソメ)の思いを込めた物語
岡山の北に広がる美しい高原「ひるぜん」。
そこには、丹精込めて果物を育てる農夫たちがいました。その一人「ケイジ」は、その美味しさをより多くの人に伝えたいと、今日も我が子を慈しむように果物たちに語りかけるのでした。
「どうすればお前たちの素晴らしさを、国中の人たちに届けられるのだろうね」
そのとき、山葡萄の陰から妖精が顔を出しました。それはスイーツの妖精「イト」でした。
「果物たちを大切に育ててくれている、あなたにだけ教えてあげる。私が秘密の材料を果物に混ぜて呪文を唱えれば、美味しい魔法のコンフィチュールが出来るの。しばらく待っていてね」
イトはそう言って舞い上がると、南を目指して飛んで行きました。まず向かったのは美の館。イトはそこで不思議な「百年の蜜」を手に入れます。そして次に夢の館で見る人を虜にする美女の絵を手に入れると、ケイジのところへ戻って来ました。
「お待ちどうさま。じゃあ始めましょう。でも覚えておいて。この魔法は実りの季節にしか効かないの。そして必ず自ら果実を摘み、皮を剥き、心を込めて木べらを回しながら煮るのよ。」
ケイジが鍋をかき混ぜると、イトは百年の蜜を注ぎながら歌うように呪文を唱えました。すると鍋には、すてきな香りのコンフィチュールが・・・。イトはそれをびんに詰め、持ち帰った絵を貼ると、こう言いました。
「このコンフィチュールは美味しいだけじゃない。それを食べた人がいつまでも健やかで美しくいられるの。そしてある日、自分が絵の中の美女そっくりになっていると気付くの。でも、実りの季節に心をこめて手作りすることを忘れちゃだめよ。欲張ってたくさん作ろうとすると、私の魔法は効かないから。約束を守れば、私はいつまでもあなたのそばにいますからね。」
その後ケイジとイトの「百年の蜜コンフィチュール」は、里でもたいそう評判となりました。
しかしある日、噂を聞いた隣村の長者がケイジの留守中、寝ていたイトを連れ去ったのです。長者の家には大量の冷凍果実と巨大なジャムの製造装置、そして大鍋が準備されていました。
「さあ妖精、お前の魔法を見せてみろ。コンフィチュールを作り続けて、売りさばくんじゃからのう。」
しかし、もちろん魔法は効きません。欲張った長者は、そこで全てを失ってしまったのでした。そしてケイジのもとに戻ったイトは、木べら回すケイジの傍らで楽しそうに歌い続けたのでした。
*コンフィチュール:仏語でジャムを意味する。味を整える ために数種類の果物を組み合わせたり、リキュールやハーブ、スパイスを加える場合もある。
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